尖閣問題で思うこと

今回の一件は完全に日本の負けで終わっちゃいました。当然といえば当然で日本と中国では国としての力の差が出たということ。日本人の潜在意識としてこれまで(ここ100年くらい)の経験から中国に対し優位という意識があったと思うけど、経済や軍事を含めて中国に対して既に力関係が逆転して劣っていることを気づかされたいい機会だったのでは。いくら正論っぽいこと言ってたって国同士の関係は昔と変わらず結局のところパワーゲームなんだろう。
今回の事件で中国の対応で、外交的経済的果ては民間人の拘束までやったことに、日本では大人の対応として法律に基づいて処置するってやってたけど、ほんとのところ大人の対応ってどっちなんだろうか…。日本側はきれいごとで処理しようとしたことが失敗だったのでは。日本では本音と建前を使い分けるというけれど、国同士の関係で本音と建前をちゃんと使い分けてないように思う。国としての大人の対応ってきれいごとでは無くて、本音と建前を使い分けることなんじゃないだろうか。
アメリカが日米安保の適用内とした発言があったけど建前上発言して中国の動きにクギを刺しただけで、本音では中国とやりあったらアメリカもただでは済まないはずで対立を望む筈も無い。アメリカとしては東シナ海で中国の動きを封じ込めるために、沖縄を含む南西諸島ならびに台湾は戦略的に価値があるだろうけど、現時点で尖閣に軍事基地があるわけでも無いし、アメリカにとってどっちのもんでも現状維持で構わん意識なんじゃないだろうか(軍事施設ができるとなれば話は別だろうが)。さっさと緊張緩和してくれってのが本音で、今回のように日本側にババを掴まして、アメリカから距離を取ろうする民主党政権に揺さぶりをかけるって思惑もありそう。中国もアメリカとの無用な対立を避け、あくまで日中間の問題として処理が適当であることを認識していて、アメリカの安保適応発言には現時点では突っ込まないんだろう(現時点では中国に対してアメリカが優位な状況だし)。中国がアメリカに対して優勢な状況となってきたときに、初めて安保の件に焦点を当ててくるんではないだろうか。そういうパワーゲームの意味で中国は置かれた現状を把握して、戦略的に自国の権益を固めてゆくんだろうなぁ。尖閣問題も日本が比較優位だった1970年代の日中国交交渉で先送りして経済協力を引き出して、自国が力を蓄えた後に動き出すって戦略は先見があったと思う(その当時の実力者って勝g小平だったかな…。だてに権力闘争生き残ってない。)。今後南西諸島からのアメリカの影響排除と日本への圧力、沖縄の弱体化と無力化、太平洋への進出の既成事実化、アメリカからの覇権奪取を狙うだろうな。現時点でそうなりつつある部分があるけれど…。最近は日本の国債も買われてるって言うし、国の首根っこ押さえられかけてるけど。アメリカも中国に国債買われてるから、だんだん力関係変わってくるんじゃなかろうか。
まぁ今回の問題で中国の本音と建前がはっきりと見えてきたし、今後のいい教訓になったのでは。日本と中国との過去の経緯から、圧倒的に力の差が生まれたら、日本と軍事衝突煽って、ボコボコにしてやる(核を使うかわからんけど)とか、経済的に追い落とすくらいが中国の本音なんじゃないだろうか。軍事面では日本は専守防衛だろうけど、ミサイルでも先に飛んでこなきゃ、どっちが先に打ってきたなんて何とでも言えるだろうし。日本だけで中国とやりあっても、局所的に勝ったとしても日本は中国の占領まで行えるとは思えないし(中国が日本の占領は可能だろう)、いざとなれば核行使の選択肢もありえるから、現時点で絶対に単独で戦ってはいけない相手であるし、きっかけを与えるようなことを避けなければならないと思う。
これまでの100年くらいの日本と中国との力関係で考えると、戦前の日本優勢の時期から戦後の日本が比較優位の時期、そして今の日本が比較劣位の時期と移ってきた。それ以前はずーっと中国優位の時期が続いていたわけで、たまたま100年くらい中国が不調だったに過ぎないし。19世紀以前は行動範囲が広い時代じゃなかったから、日本は軍事や経済の面で中国の影を意識する必要は無かったけれど、今の時代日本と中国との距離では影響を受けるのは必至だろう。日本にしてもアジアの大国って意識が残っているけど、現実的には第二次大戦後にイギリスがヨーロッパの一国の地位に落ち着いたのように、アジアの一国としての地位に落ち着かざるを得ないんじゃないだろうか。
今回の一件から日本人の意識に対中強硬論が徐々に広がることが一番怖いと思う。現実的に戦ってはいけない相手なのに、強硬論を抑えきれずズルズルと対立が激しくなっていくことは避けなければいけない。日中戦争のときも国内の強硬論に押されて全面戦争に突き進んだ訳だし(少なくとも日中間が当時のような日本に比較優位の時代ではない)。太平洋戦争のような国内の強硬論に押されて勝ち目の無い戦いをせざるを得ない状況にならなければ良いけど。
これからは日本が今まで抱いてきた幻想を捨てて、自国の現状を認識して、それに見合った戦略が必要なんだろう。アメリカだって易々と今の地位を明け渡すと思えないし、衝突を絶対に避けつつ上手いことアメリカや周辺国を巻き込んで、中国の膨張を押さえ込んでいかざる得ないだろう。今後アメリカと中国の覇権争いとなってゆくだろうけど、少なくとも今後も中国の力は大きくなるだろうし、過去の経緯から日本は厳しい状況に置かれ、直近に中国という強大国に直面して難しい舵取りることになりそう。